新入生歓迎会(亜弥ちゃんと美貴ちゃんの場合)
〜亜弥ちゃんの場合〜
ある日、わたしと美貴はサークルの新入生歓迎会に行くことになった。
わたしも美貴もサッカーが好きで、フットサルサークルの新歓はチェック済だった。
参加した1年生は10人ほど。女の子はわたしたちだけだった。
美貴はとにかく飲みまくっていた。というよりも、飲まされていた。
高校時代、美貴が男子と話しているところを見たことがなかった。無論わたしも話したことはなかった。
男子は声が大きくて、怖くて、運動できる人が1番えらい、目立ってもいい、そんな序列ができているような感じがして、なんだか恐ろしかった。
女子にもそういうカースト制度は存在していたし、わたしたちもそんな女子の社会でなるべく波風を立てぬようにひっそりと過ごしていた。
だから、わたしは余計に、今の美貴の乱痴気ぶりに唖然としたのだと思う。
「はあああ酔っぱらっちゃいました〜あはは」
体をくねらせ、1オクターブ高い声を出し、3年の和樹さんの手を握って笑っている。
和樹さんはわたしと美貴が一目見た時から「格好良い!」と熱をあげていた先輩だ。
それを、わたしの存在はまるで無視して、いちゃいちゃしている。
まるで、動物のようだった。
いや、人間も動物なのだけど、今まで見えなかった動物的な「欲」が爆発している感じがしていた。
ビールや梅酒のアルコールもあいまって、わたしは感じたことのない吐き気をもよおした。
「それにしても、和樹さんちょっと嫌そうな顔してたな。」
亜弥ちゃんはトイレに向かいながら、少し心がほっとするのを感じていた。
〜美貴ちゃんの場合〜
初めての新歓。初めてのアルコール。初めての男の人との会話。
とても楽しくて飲み過ぎてしまった。
男の人はとても怖かった。何もしていないのに、目立たないというだけで、馬鹿にされている感じがしていた。
考え過ぎかもしれないけれど、この感覚を人に相談するのも嫌だった。ずっと自分の中で闘っていた。
だけど、もう大学生だ。女子大生だ。何も気にすることはない。
いきおいで、和樹さんの手を掴んでみた。
「酔っぱらっちゃいました〜」
「あーはいはい」
和樹さんはそのまま手を握り返してくれた。
すごい。お酒の場ってこんなことしても大丈夫なんだ。嬉しい。
ドキドキしながら、周りを見渡すと、亜弥と目が合った。
亜弥は、正直すこしダサい男の先輩たちと隅の方で飲んでいた。
「亜弥は大学でも目立たないグループが似合うんだな」
美貴ちゃんは、和樹さんの方に向き直し、空いたグラスにビールをついだ。
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昨日、京王線の終電に、おそらく新歓帰りと思われる、アホみたいに酔っぱらった女子が、男の人たちに介抱されながら乗ってきた。
その女の子は、3人の男性陣の中で1番格好良い男の子の手を握り、体をくねらせていた。
そのイケメンが降りると、彼女はほか2人のどちらかの手を握るかと思いきや、顔を上げ口を開けて寝始めた。興味のなさが丸出しであった。見ていて思わず笑ってしまった。
女の行き場のない性欲と、相手にされない男の「でもお前そんなに酔っぱらってたら、連れて帰って襲うことくらいできるんだぞ」という余裕が車内に漂う。
大学生ってやっぱりバカで面白い。
と思って書きました。