栗原類
はじめて見たのは、2、3年前のバラエティ番組だったと思う。
のぼーっとしていて、ニヒルな笑い方をする人だと感じた。
「ネガティブモデル」とテレビでは表記されていたが、本人がネガティブなことを言っているような印象は受けなかった。
だから、栗原類は何も悪くないのに、テレビの誇張ばかりが気になった。
年が明けて引っ越しをした。
その翌々週の土曜日、快晴。空気は乾燥。まさに冬、という日。
電車の中でTwitterを見ていたら、栗原類のサイン会のお知らせが流れてきた。
会社に向かうために電車に乗っていたはずなのに、わたしの頭は、栗原類に会いに新宿に行くこと、に切り替わった。
わたしは、自分でも気づかぬうちに、栗原類のことをだいぶ好きになっていたらしい。
サイン会に到着すると、ファン同士の塊がポツポツ出来ていて、それもお姉様の集団だったので、わたしはなるべく目立たないよう心だけ小さくなった。
また、「そもそもこの仕事をしていながら、タレントのサイン会に来るなんて」という自戒の念も急にふつふつと沸き上がり、とにかく静かに事を済ませることだけに集中した。
自分の番が近づき、荷物を通路の端に置くように促される。
お気に入りのニット帽を脱ごうか迷ったが、栗原類に会うのに帽子をかぶったままというのは失礼ではないか、と思い直して脱いだ。
係員に誘導され、ついに栗原類と対面。
栗原類はテレビで見るままだった。手を出されたので、わたしも出したら、結果握手になった。
何も話すことを用意していなかったので、少しの間黙って顔を見てみた。
男の子だった。
目鼻立ちがしっかりして、黒髪がきれいで、こういう人を「可憐」というのだと思った。
そして、やはりネガティブだとは思わなかった。
むしろ、何も話せないわたしに積極的に話しかけてくれる様は、この場を楽しいものにしようというポジティブさすら感じさせたのだ。
ということを、
昨日何の気無しに開いた栗原類のサイン本に、栗原類のサインよりも大きな自分の字で書かれた、「栗原類is可憐!!!」の文字を発見して思い出した。