おばあさんとクコの実
おばあさんが、おうちの庭に、クコの実のなる木を植えました。
クコの実とは、よく杏仁豆腐の上にのっている、赤くて小さな実です。
おばあさんは毎日クコの実のなる木に話しかけました。
「おおきくなあれ、おおきくなあれ」
おばあさんは愛情をもって育てていたので、1年後にはそれはそれは大きな、クコの実のなる木に成長しました。
そして、春、真っ赤なクコの実が枝という枝にたくさんつきました。
おばあさんは試しに一つぶ、クコの実を取って食べました。
すると、なんとまあ美味しいのでしょう。
甘くてほっぺたが落ちそうになるほど。
おばあさんは嬉しくなって、クコの実を両手一杯に取り、一気に食べました。
しばらくすると、おばあさんの体じゅうにむらさき色の“しっしん”が現れました。
おばあさんはおどろいて、すぐに病院にかけこみました。
先生はくすりを渡してくれました。
おばあさんは、そのくすりを毎日ぬりました。しかし、まったく良くなるどころか、おばあさんの体はどんどんむらさき色になっていきました。
おばあさんは、外に出るのがいやになって、おうちにこもってしまうようになりました。
クコの実のなる木はどんどんやせていきました。おばあさんが話しかけてくれないのでさみしいのです。
ある日、となりのおうちに、にわしさんがやってきました。
そして、おばあさんのいえのクコの実のなる木を見て、
やあ、なんとりっぱなクコの実のなる木!と、外からおばあさんを呼びました。
とても大きなクコの実のなる木!でも、さいきんお水をあげていないんじゃない?
わたしはクコの実を食べて、体じゅうがむらさき色になってしまったの!いまいましいクコの実!
おばあさん、クコの実はどれくらい食べたんだい?
両手にいっぱいよ!
なんと!おばあさん、クコの実は一つぶ食べたら、1日元気でいられるほど、えいようがたっぷりなんだ。それをそんなに、両手いっぱい食べたから、おばあさんの体は“アレルギー”を起こしてしまったのさ。
まあ、なんてこと!クコの実が悪いんじゃなかったのね。ごめんなさい。でも、このむらさき色はどうしたらなおるのかしら?
また、前とおなじように、毎日クコの実のなる木に話しかけたらいいさ。きっとクコの方もさみしがっているから、おばあさんと話せたら喜ぶよ。
楽しくおはなししていたら、気分もよくなって、すぐに体も良くなるよ!
おばあさんはにわしにお礼を言い、その日からまた、クコの実のなる木に話しかけました。
お前のせいにしてごめんね。よくばったわたしが悪かったね。
それから何日かたつと、おばあさんの体のむらさき色は、すっと消えてなくなりました。
おばあさんは今日も、クコの実のなる木を大事に育てているのです。