spa warsで思い付いたつれづれ
以前住んでいた大田区の家はユニットバスだったので、基本的に湯船に湯を張ることはなく、シャワーで体を洗う毎日だった。
なので、本当に疲れて体がカチコチになった時には、おふろの王様を利用していた。
おふろの王様は、中に3種類とサウナ、外にも風呂が3種類あるという、なかなか豪華な造りだった。その造りの割に使用料は安く、いつ行っても混んでいた。
特に、1番人気の五右衛門風呂ふうの風呂は、常に人がぎっしりで、まるで具材を詰め込んだ鍋のようになっていた。
見ているだけで出汁(正確に言うと汗とアカ)が出そうだった。
私はのんびり湯につかっていたいので、いつもその風呂は避けていたのだが、1回だけ試しにその風呂へ突っ込んでみたことがある。
己の場所を確保していた女性陣から白い目で見られながら、わたしは湯につかった。
確かに人気なだけある。お湯加減もちょうどよく、気持ちよかった。わたしはドリフターズばりにその風呂を楽しんでいた。
その時、1人の老婆が風呂に入ってきた。しかし、入ってきたは良いものの、座る場所がない。老婆は立ち尽くした。
と、思っていた。
次の瞬間、老婆の尻がわたしの顔面に迫ってきた。
おいおいと慌てたが、すでにぎゅうぎゅう詰めの風呂、逃げ場がない。尻は目の前。目の前。目の前。
気がつくと、わたしは
「ごめんなさい!」
と叫びながら、老婆の尻を両手で掴んでいた。垂れた脂肪のかたまりはわたしの掌の中。
わたしが顔を真っ赤にしていると、老婆は
「あら、恥ずかしながら…」
と言った。
不謹慎だが、横井庄一さんの「恥ずかしながら帰ってまいりました」を思い出した。
これがわたしの、最初で最後のspa wars。