手をにぎる
先にきみが降りた電車。
空いた席に、男の子が座った。
小学校1、2年生くらいだろうか。
女の子が寄ってきた。
3、4歳くらいだろうか。
椅子によじのぼって、一息ついた。
男の子が女の子の頭に手をのばす。
脱げそうになっていたベージュの帽子を少し深くかぶせる。
女の子の手を握る。
女の子は前を見ている。まっすぐ。
男の子は下を見ている。妖怪ウォッチのカードゲーム。
「手を離した方が整理しやすくない?」
男の子は左手でカードをケースに入れる。
右手はしっかり女の子の左手をつかむ。
終着駅につくまで
手は握られたままだった。
当たり前のように手を握って降りていく。
男の子と女の子。
隣にいたきみとわたしは
絶対に手を握れない。
当たり前が当たり前でなくなる。
それが大人になるということ。
そんなことより、お母さんどこ行ってん。